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10-44帝国 フェザーンへ
ラインハルト「フロイライン。そろそろ休憩せぬか?」
ヒルダ「はい。陛下。今日はコーヒーでよろしゅうございますか?」
ラ「任せる。ところでフロイライン。先日なかなか寝付けなかったものでな、読書をした。」
ヒ「何のご本にございますか?」
ラ「地球時代の文化と歴史についてだ。」
ヒ「マァ。ホホホ。それはお珍しいものを。」
ラ「何だ?余がそのようなものを読むのがおかしいか?」
ヒ「いえ。ちょっと意外でしたから。」
ラ「マァよい。そこに面白い記述があってな・・・・・・・・」
ヒ「どのような?」
ラ「昔の地球では、集団で風呂に入るという習慣があったそうだ。」
ヒ「我が帝国の古い習慣にも、その面影は残っております。
たしか、ギムナジウムと言ったかしら?」
ラ「さすがはフロイライン。よくご存じだ。
有史以来、そのような習俗は、それこそ各地にあったそうだ。
ギムナジウムもその中の一つ。
で、余が興味を引かれたのは、大陸の極東に位置する日本という国の、近世以降に
庶民の間で広まった銭湯という風呂だ。
田舎の方へ行けば、ギムナジウムと同じように、男女が一緒に入るものもあったそうだが、
町中では、男女が別に入るこの銭湯なるものが一般的であったそうだ。」
ヒ「その銭湯なるものは、男女が別に入る以外に何か特徴がおありなのですか?」
ラ「まず、外見が当時の神殿を模したような、重厚な作りとなっている。
中に入ると入り口に、番台と呼ばれる、料金所があってな、そこで入浴料を払う。
それから、その番台から浴場までは、男用と女用の脱衣所と浴場を仕切る壁があるそうだ。」
ヒ「失礼ながら陛下、特に興味深い特徴ではないように思えますが。」
ラ「マァ、ここまではな。
浴場の壁には、タイルで作られたモザイクか、木の壁に直接描かれた壁画があるのだそうだ。
その壁画を見ながら、ゆったりと湯に浸かるもよし。男あるいは女同士で本音で語り合うもよし。
これを、当時の日本では、裸のつきあい、と言っていたそうだ。
マァ、酒を飲みながらでも、本音の語らいは出来ようが、やもすればすぐに忘れてしまう。」
ヒ「それはなかなかに興味深いですわ。陛下。」
ラ「極めつけが、湯上がりの儀式だ。」
ヒ「儀式?何のためのでございましょうか?」
ラ「さて、そこまでは書いてなかったので、余にも解らん。
ただ、その作法は詳しく書かれてあった。
まず、タオルで湯を拭い、腰に巻き付ける。
まあ、女の場合にはもっと上であろうが。
そして起立したまま、ミルクを飲む。
カップなどにあけずに、瓶から直接にだ。
その時に、瓶を持たぬ手はこのように腰に当て、背筋を伸ばして。
仲間同士で来た場合には、横一列に整列するのだそうだ。
どうだ?面白そうであろう?
余も、たまには主従の関係を忘れ、諸将らと裸のつきあいとやらをしてみたいものだ。」
ヒ「それもよいかもしれませんね!早速、主席副官のシュトライト准将にご相談してみます。」
・・・・・・・・
ヒ「陛下!陛下!吉報でございます。」
ラ「どうしたというのだ?フロイラインらしくもない。そんなに慌てて。」
ヒ「あったのです。」
ラ「だから落ち着かれよ。フロイライン。何がだ?」
ヒ「銭湯でございます。フェザーンに一軒だけ、古代日本の様式と伝統を守っているところが。」
ラ「真か?では、引き続きシュトライト准将と協力して、銭湯行きの計画を詰めてくれ。
男は諸提督が中心となろうが、女湯にそなた一人では寂しかろう。そこは自由に人選するがよい。
ん~~~!これで仕事にも張り合いが出るというものよ。」
・・・・・・・・
このときが、フェザーン銭湯への行幸を公式に口にした初めての時とされる。
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